2.2. アクセス制御の洗練

2.2.1. 的確なアクセス制御

先ほどの節で定義した基本的な ACL では、さまざまな規則を ACL 全体 (すべてのリソース) に対して適用しました。 しかし実際には、アクセス制御にはさまざまな例外がつきものですし、 もっと複雑なものになるでしょう。 Zend_Acl では、このような目的のためにも直感的で柔軟な方法で対応できます。

例にあげた CMS では大半のユーザを 'staff' グループでまとめて管理していました。 ここでは新しく 'marketing' グループを作成し、CMS のニュースレターや最新ニュースへのアクセスを許可させる必要があるでしょう。 このグループには、ニュースレターや最新ニュースの公開や保存権限があれば十分でしょう。

さらに 'staff' グループに対しては、ニュースの内容は閲覧できますが 最新ニュースの改変はできないようにします。 最後に、(administrators を含む) 全員は 'お知らせ' を保存できないようにします。これは、1 日から 2 日程度の有効期限しか持たないものだからです。

まず、ロールレジストリを変更してこれらの変更を反映させます。 'marketing' グループを作成して 'staff' と同様の基本権限を持たせることにしたので、 'marketing' を作成し、'staff' の権限を継承させます。

<?php
// 新しいグループ marketing は staff の権限を引き継ぎます
$acl->addRole(new Zend_Acl_Role('marketing'), 'staff');

次に、これらのアクセス制御は特定のリソース (例: "newsletter"、"latest news"、"announcement news") に限定されることに注目しましょう。ここで、これらのリソースを追加します。

<?php
// 規則を適用するリソースを作成します
require_once 'Zend/Acl/Resource.php';
$acl->add(new Zend_Acl_Resource('newsletter'));           // ニュースレター
$acl->add(new Zend_Acl_Resource('news'));                 // ニュース
$acl->add(new Zend_Acl_Resource('latest'), 'news');       // 最新ニュース
$acl->add(new Zend_Acl_Resource('announcement'), 'news'); // お知らせ

そして、次のような特別な規則を、ACL の該当範囲に適用します。

<?php
// Marketing は、ニュースレターおよび最新ニュースを公開、保存できなければなりません
$acl->allow('marketing', array('newsletter', 'latest'), array('publish', 'archive'));

// Staff (そして継承による marketing) は最新ニュースの改変ができません
$acl->deny('staff', 'latest', 'revise');

// 全員 (administrators を含む) はお知らせを保存することができません
$acl->deny(null, 'announcement', 'archive');

これで、最新の変更内容を反映した ACL への問い合わせが行えるようになります。

<?php
echo $acl->isAllowed('staff', 'newsletter', 'publish') ?
     "allowed" : "denied"; // denied となります

echo $acl->isAllowed('marketing', 'newsletter', 'publish') ?
     "allowed" : "denied"; // allowed となります

echo $acl->isAllowed('staff', 'latest', 'publish') ?
     "allowed" : "denied"; // denied となります

echo $acl->isAllowed('marketing', 'latest', 'publish') ?
     "allowed" : "denied"; // allowed となります

echo $acl->isAllowed('marketing', 'latest', 'archive') ?
     "allowed" : "denied"; // allowed となります

echo $acl->isAllowed('marketing', 'latest', 'revise') ?
     "allowed" : "denied"; // denied となります

echo $acl->isAllowed('editor', 'announcement', 'archive') ?
     "allowed" : "denied"; // denied となります

echo $acl->isAllowed('administrator', 'announcement', 'archive') ?
     "allowed" : "denied"; // denied となります

2.2.2. アクセス制御の削除

ACL からひとつあるいは複数のアクセス規則を削除するには、 removeAllow() メソッドあるいは removeDeny() メソッドを使用します。allow() および deny() と同様、null 値を指定すると すべてのロールやリソース、権限を表すことになります。

<?php
// 最新ニュースの改変拒否を staff (そして継承による marketing) から削除します
$acl->removeDeny('staff', 'latest', 'revise');

echo $acl->isAllowed('marketing', 'latest', 'revise') ?
     "allowed" : "denied"; // allowed となります

// ニュースレターの公開や保存の権限を、marketing から取り除きます
$acl->removeAllow('marketing', 'newsletter', array('publish', 'archive'));

echo $acl->isAllowed('marketing', 'newsletter', 'publish') ?
     "allowed" : "denied"; // denied となります

echo $acl->isAllowed('marketing', 'newsletter', 'archive') ?
     "allowed" : "denied"; // denied となります

上で説明したように、徐々に権限を変更していくこともできますが、 権限に対して null 値を設定すると、 このような変更を一括で行うことができます。

<?php
// marketing に対して、最新のニュースへのアクセスを許可します
$acl->allow('marketing', 'latest');

echo $acl->isAllowed('marketing', 'latest', 'publish') ?
     "allowed" : "denied"; // allowed となります

echo $acl->isAllowed('marketing', 'latest', 'archive') ?
     "allowed" : "denied"; // allowed となります

echo $acl->isAllowed('marketing', 'latest', 'anything') ?
     "allowed" : "denied"; // allowed となります