先ほどの節で定義した基本的な ACL では、さまざまな規則を ACL 全体 (すべてのリソース) に対して適用しました。 しかし実際には、アクセス制御にはさまざまな例外がつきものですし、 もっと複雑なものになるでしょう。 Zend_Acl では、このような目的のためにも直感的で柔軟な方法で対応できます。
例にあげた CMS では大半のユーザを 'staff' グループでまとめて管理していました。 ここでは新しく 'marketing' グループを作成し、CMS のニュースレターや最新ニュースへのアクセスを許可させる必要があるでしょう。 このグループには、ニュースレターや最新ニュースの公開や保存権限があれば十分でしょう。
さらに 'staff' グループに対しては、ニュースの内容は閲覧できますが 最新ニュースの改変はできないようにします。 最後に、(administrators を含む) 全員は 'お知らせ' を保存できないようにします。これは、1 日から 2 日程度の有効期限しか持たないものだからです。
まず、ロールレジストリを変更してこれらの変更を反映させます。 'marketing' グループを作成して 'staff' と同様の基本権限を持たせることにしたので、 'marketing' を作成し、'staff' の権限を継承させます。
<?php // 新しいグループ marketing は staff の権限を引き継ぎます $acl->addRole(new Zend_Acl_Role('marketing'), 'staff');
次に、これらのアクセス制御は特定のリソース (例: "newsletter"、"latest news"、"announcement news") に限定されることに注目しましょう。ここで、これらのリソースを追加します。
<?php // 規則を適用するリソースを作成します require_once 'Zend/Acl/Resource.php'; $acl->add(new Zend_Acl_Resource('newsletter')); // ニュースレター $acl->add(new Zend_Acl_Resource('news')); // ニュース $acl->add(new Zend_Acl_Resource('latest'), 'news'); // 最新ニュース $acl->add(new Zend_Acl_Resource('announcement'), 'news'); // お知らせ
そして、次のような特別な規則を、ACL の該当範囲に適用します。
<?php // Marketing は、ニュースレターおよび最新ニュースを公開、保存できなければなりません $acl->allow('marketing', array('newsletter', 'latest'), array('publish', 'archive')); // Staff (そして継承による marketing) は最新ニュースの改変ができません $acl->deny('staff', 'latest', 'revise'); // 全員 (administrators を含む) はお知らせを保存することができません $acl->deny(null, 'announcement', 'archive');
これで、最新の変更内容を反映した ACL への問い合わせが行えるようになります。
<?php echo $acl->isAllowed('staff', 'newsletter', 'publish') ? "allowed" : "denied"; // denied となります echo $acl->isAllowed('marketing', 'newsletter', 'publish') ? "allowed" : "denied"; // allowed となります echo $acl->isAllowed('staff', 'latest', 'publish') ? "allowed" : "denied"; // denied となります echo $acl->isAllowed('marketing', 'latest', 'publish') ? "allowed" : "denied"; // allowed となります echo $acl->isAllowed('marketing', 'latest', 'archive') ? "allowed" : "denied"; // allowed となります echo $acl->isAllowed('marketing', 'latest', 'revise') ? "allowed" : "denied"; // denied となります echo $acl->isAllowed('editor', 'announcement', 'archive') ? "allowed" : "denied"; // denied となります echo $acl->isAllowed('administrator', 'announcement', 'archive') ? "allowed" : "denied"; // denied となります
ACL からひとつあるいは複数のアクセス規則を削除するには、
removeAllow()
メソッドあるいは removeDeny()
メソッドを使用します。allow()
および deny()
と同様、null
値を指定すると
すべてのロールやリソース、権限を表すことになります。
<?php // 最新ニュースの改変拒否を staff (そして継承による marketing) から削除します $acl->removeDeny('staff', 'latest', 'revise'); echo $acl->isAllowed('marketing', 'latest', 'revise') ? "allowed" : "denied"; // allowed となります // ニュースレターの公開や保存の権限を、marketing から取り除きます $acl->removeAllow('marketing', 'newsletter', array('publish', 'archive')); echo $acl->isAllowed('marketing', 'newsletter', 'publish') ? "allowed" : "denied"; // denied となります echo $acl->isAllowed('marketing', 'newsletter', 'archive') ? "allowed" : "denied"; // denied となります
上で説明したように、徐々に権限を変更していくこともできますが、
権限に対して null
値を設定すると、
このような変更を一括で行うことができます。
<?php // marketing に対して、最新のニュースへのアクセスを許可します $acl->allow('marketing', 'latest'); echo $acl->isAllowed('marketing', 'latest', 'publish') ? "allowed" : "denied"; // allowed となります echo $acl->isAllowed('marketing', 'latest', 'archive') ? "allowed" : "denied"; // allowed となります echo $acl->isAllowed('marketing', 'latest', 'anything') ? "allowed" : "denied"; // allowed となります